碓氷優佳シリーズ
1作目 『扉は閉ざされたまま』
2作目 『君の望む死に方』
3作目 『彼女が追ってくる』
4作目 『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』
5作目 『賛美せよ、と成功は言った』
今回は第二弾の『君の望む死に方』です。
最初に言っちゃうと前作より評判はイマイチです。
でも、私は優佳のサイコパスっぷりが見れたから満足っす。
あらすじ
余命六カ月――ガン告知を受けたソル電機社長の日向は、社員の梶間に自分を殺させる最期を選んだ。日向には、創業仲間だった梶間の父親を殺した過去があったのだ。梶間を殺人犯にさせない形で殺人を実行させるために、幹部候補を対象にした研修を準備する日向。彼の思惑通りに進むかに見えた時、ゲストに招いた女性・碓氷優佳の恐るべき推理が、計画を狂わせ始めた…。
(引用元:amazon)
今回も最初から犯人がわかっている倒叙ミステリーです。
少し変わっているのが、
- 日向を殺したい梶間
- 梶間に殺されたい日向
の2軸構成になっているところ。
物語は同じ時間軸で進みますが、それぞれの視点で語られるちょっと変わった構成になっています。
相関図
今回もシンプルな相関関係になっています。
舞台はソル電気の保養所。
ここに研修生を集めて、殺そうとしたり、殺されようとしたりするわけです。
需要と供給がマッチした殺人案件
稀に見る、見事に需要と供給がマッチした案件だと思うんですよ。
だって、殺したい相手からは「君に殺されたい」と思われて、殺されたい相手からは「あんたを殺したい」って思われてるんですよ?
マッチングアプリがあったら相性100%じゃないですか。
需要と供給と言えば、
私はね、夏になると思うのです。
え?
異論あります?
男子は浴衣女子が好きですよね?
髪の毛をアップして、狭い歩幅でちょこちょこ歩く女子が見たいっしょ。
普段着と違ってキュンとくるぅ~。
そして女子!
実は浴衣が着たいでしょ?
だって可愛いじゃん、あれ。
着物は着るのが大変だけど、浴衣くらいなら自分で着れるし。私は着れない
普段と違う自分になれてウキウキするよね。
- 男子は見たい 需要
- 女子は着たい 供給
ほら~、見事にマッチしてる。
エリートサラリーマンのマインドが垣間見れる面白さ
「研修の参加者は幹部候補」と囁かれる研修に、梶間ら4人が保養所に集められます。
日向が殺されるために社員を集めたとしても、名目は『研修』ですのでそれなりに課題が出される。
投資家と模された優佳たちゲストへ向けて、自社のプレゼンをすること。
このやり取りがなかなか面白くて、優秀な社員を集めただけあって、ふむふむと思うものでした。
そして社長からのアドバイスは的確で、サラリーマンの私には興味深かったです。
しかし、 プレゼンの内容が、やや実務により過ぎているように感じられた。それぞれが担当している、個々の仕事を詳しく説明しようとしすぎだ。投資家は専門家じゃない。彼らが知りたいのは我が社の技術ではなく、技術 力 なのだ。そしてそれが市場に与える影響。君たちは、成果ではなく、社会に対して何をなし得るかを説明しなければならなかった。
投資家に資金を出してもらうには、自分たちの成果ではなく資金を出すに値するものを提示しなければならない。
資金を集めるって大変だー。(←当たり前)
研修生は、社長の言動や研修内容をトレースして、この研修の目的を思考します。
さらに、集められたメンバーの構成まで視野に入れる。
- 男女同数
- 独身
- 別々の部署
あらゆる材料をかき集めて研修の狙いは何かを考える。
さすがだわ。
私だったら、与えられた課題でいっぱいいっぱいで、研修の意味まで考えられないよ(^^;
ここが惜しい。テンポの悪さ
今回の物語は、梶間(殺したい人)と日向(殺されたい人)がそれぞれ知らないところで画策する話です。
さりげなく凶器を置いたり、外部犯に見せるために鍵を開けたり。
計画は「人を殺す」という壮大なものなのに、やってることは保養所で準備をするというこじんまりした感じなんですよ。
殺すの?殺さないの?
ふたりの頭の中を垣間見るだけなので、現実はなかなか進まない。
なかなか進展しないからちょっともどかしいかも。
相変わらずラストはスッキリしない
今回のラストもハッキリしない感じで終わります。
アリっちゃアリだけど、う~ん、どうだろう。
『扉は閉ざされたまま』とはちょっと違うんだよなぁ。
碓氷優佳ファン以外は読んでもグッとこないかも。
そんなにミステリーじゃないし、保養所でちまちま画策するだけ。
見どころを上げるとすれば
- 1作目の『扉は閉ざされたまま』の登場人物が出てくる
- 優佳と伏見の現在
- 優佳の冷酷さ
って感じです。
単体だと面白さ半減ですね。
【ネタバレあり】碓氷優佳というヤバイ女
ここからはネタバレを含む感想です。
読みたくない人はそっと閉じてね。
今回も優佳がヤバかったですねー。
日向が仕掛けた凶器をことごとく無効化して殺人事件が起きないようにしたんですけど、あっ、そこのあなた、
って思いました?
ノンノン。
まだ優佳のことがわかってませんね。
思いやりでやったわけじゃないんですよ。
優佳はただ自分の目の前で殺人が起きて欲しくなかっただけ。
日向さん。あなたが死ぬのは勝手です。自殺しようと、梶間さんに殺されようと、好きにすればいい。でもそれは、わたしのいないところでやってください!
これがすべて!
「結果的に殺人の邪魔をしたんだったらいいじゃない?」って?
バカ言っちゃいけません。
邪魔をするために、園田と比呂美が争うよう仕向けたんですよ?
優佳の煽りにより、比呂美はワインボトルで園田を殴ろうとしたんですから、下手すりゃ暴行、いや殺人事件ですよ。
なのに煽った本人が
「それにしても」優佳がやや柔らかい口調でつぶやいた。「誰も怪我をしなくて、本当によかった」
えーーーーー!
煽った張本人のセリフーーー?Σ( ゚Д゚)アガガ
お前がそうさせたんじゃねーか!
怖いわ~、この人、マジで怖いわ~。
最初はしょうがない人たちだなと思っていたのですが、やがて堀江さんが怒りの表情を見せるのは、海外の仕事に関する話題が出たときだとわかったんです。使えると思いました。
ほらここ!
聞きました?
本人がハッキリと言ってるんですよ。
使えると思いました。
使えると思いました。
使えると思いました。
ヒィ~。
やっぱりサ・イ・コ・パ・ス。
優佳はそうでなくっちゃ。
なんたって
って言う女だからね。
物語自体はなかなか進まないし評判もイマイチだけど、優佳のサイコっぷりが見れて私としては満足です。
最後にいつもの置き台詞を残していったし。
今回はプラス置き土産もあったなぁ。
気になる人はぜひ~。