碓氷優佳シリーズ
1作目 『扉は閉ざされたまま』
2作目 『君の望む死に方』
3作目 『彼女が追ってくる』
4作目 『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』
5作目 『賛美せよ、と成功は言った』
『扉は閉ざされたまま』は、2006年の『このミステリーがすごい』で第二位にランクインされた作品です。(ちなみに第一位は、『容疑者Xの献身』)
あらすじ
仲間の1人の発案で、卒業以来初めて同窓会を開くことになった。伏見亮輔は、その会場で仲の良かった後輩・新山和宏を殺害する計画を立て、それを実行する。彼はある理由から遺体発見を遅らせるために、ごく自然な理由を並べ立て、扉を開けさせまいとする。だが、碓氷優佳だけが部屋の様子を不審に思い、鋭利な推理で伏見を徐々に追い詰めていく。
(引用元:Wikipedia)
最初から犯人がわかっている、犯人目線で語られる倒叙ミステリーです。
あらすじにも書いてあるように、犯人の”伏見亮輔”が後輩の”新山和宏”を殺害します。
大学の同窓会で集まってるにもかかわらず、犯行に及んだ伏見。
扉一枚の向こうには、さっきまで談笑していた友人の死体がある。
いったいどうやって扉を開けさせないのか、そして開けさせない理由とはなにか。
物事は動かず、会話だけで犯人を追い詰める静かな戦いに目が離せません。
相関図
大学の同窓会と言っても、久しぶりに仲良しグループで集まっただけ。
大人数でゴチャゴチャするわけではないので、誰が誰だかわからなくなるってことはないです。
想像力をかきたてるタイトルがGOOD
まずタイトルが素晴らしい。
素っ気ない一文だけど、なんだかやけに気になりませんか?
『扉は閉ざされたまま』
閉ざされたままって言われると、扉の向こう側が気になりますよね?
- 扉の向こうはどうなってるの?
- 扉は絶対開かないの?
- 開いたらどうなるの?
サスペンス好きの好奇心をくすぐる良いタイトルだなー。
犯人「伏見亮輔」の機転
伏見が新山を殺してからも、扉を開ける機会は何度か訪れます。
新山が死んでるって誰も知らないから、無邪気に呼びに行くんですよ。
夕飯時とか宴会時とか。
でもその度に伏見は機転をきかせて、あの手この手で回避する。
一見そんなことで?と思うようなアナログな方法でも、有効な手段だったりするんです。
- ちょっとだけ特殊な環境
- ちょっとだけいつもと違う状況
それらを上手く利用して急場を凌ぐ。
伏見はやはり頭の良い人物なのでしょう。
そんな想像をしながら読みました。
天才 vs 天才の静かな戦い
この小説は、物事が大きく動いたりはしません。
仲良しグループで集まってお酒を飲んだり鍋をつついたり、そんな日常的な時間が過ぎていきます。
少しだけ「あれ?」ってなる瞬間があるけど、みんな気にも留めない。
ほんの些細な違和感。
誰もが見過ごす小さな小さな違和感を、碓氷優佳が追及していきます。
大騒ぎすることなく、よく観察しちょっとだけ行動を起こす。
そうやって少しずつ真相に近づいていきます。
この小説の面白いところは、なんといっても会話だけで犯人を追い詰める静かな戦いが見どころ。
頭の良い伏見は優佳に追い詰められても慌てることなく「その考えは妥当ではない」と反論します。
が、
頭脳明晰な優佳はその反論をひとつひとつ潰していきます。
伏見の「(自分のトリックを見破られない限り)それは不可能だ」という意見に対し、優佳は「些末な問題です」とキッパリ返す。
それは、ただの技術的な問題だからです。まっとうな頭脳を持った人間が本気で考えたら、どうとでもできるでしょう。
(引用元:扉は閉ざされたまま)
(゚∀゚;)え?
トリックを考え付かない私は、まっとうな頭脳の持ち主ではないようです(苦笑)
なので、天才同士の「伏見 vs 優佳」バトルは面白かったですねー。
ここが惜しい。伏見の動機
作中、伏見はこんなことを考えます。
殺人を心に誓った瞬間から、自分は心を許せる友を持つ資格を失った。
(引用元:扉は閉ざされたまま)
友人を手にかけるという所業から、伏見は冷酷な殺人者と想像してしまうかもしれませんが、実際はそうでもない。
「心を許せる友を持つ資格を失った」からわかるように、伏見は常識的な感覚を持っているし、苦悩が伝わってきます。
では、なぜ友を殺す道を選んだのか。
これがねぇ、個人的には動機として弱いんですよ。
ここではネタバレになってしまうので言えませんが、人を殺す動機としては弱いかなぁ。
実際、自分が伏見の立場になったら違うのかな・・・
う~ん、今のとこ唯一惜しいと感じるポイントです。
スッキリしないラストだけどベストだと思う
最後、気になるでしょ?
終わり方が雑だとせっかくの盛り上がりが台無しだもの。
- 扉は開いたのか?
- 伏見は捕まったのか?
- 天才同士のバトルの結末は?
うっふふふ
私はあの終わり方は嫌いじゃないよ。
もしかしたら、「ちょ!」って思う人がいるかもしれないけど、いい終わり方だったと思う。
ちなみに私の友人はめちゃくちゃ好きな終わり方だったらしい。
最後の2章は秀逸でした。
突然のカミングアウトと共に感想を聞かせてくれました(笑)
活字に慣れていない私でも、一気読みするくらい読みやすい小説だったし、ミステリー好きの人はぜひぜひ!
【ネタバレあり】碓氷優佳という女性について
ここからはネタバレを含む感想です。
読みたくない人はそっと閉じてね。
実はここからが私が言いたかった感想です。
なにが言いたいかって、
碓氷優佳、ヤバくないですか?
なんですか、あの女は。
ちょっとイッちゃってますよね。
「みんなあなた(伏見)がしたことに気付いてないし、このままなら逃げれるよ。ただし、私がいなければね。」
と伏見を追い詰めて、次に「だから自首してください」って言うのかと思ったら、
「私を抱いて」
・・・
・・・
・・・
え?
思わずkindleに顔を近づけたよね。
読み返したよね。
いや、「抱いて」なんて直接的な言葉は使ってないけど、内容はそれだから。
男子なら誰もが憧れるセリフ
「抱いて」
えええーーーーー???
なぜゆえ今そのセリフ?
優佳が伏見に恋してるのはわかったけど、そこでもってきたかー。
「警察にバレないし、優佳とヤレるしラッキー!」
なんて男いないだろ(笑)
「肩にかけたその両手で私の首を絞めても、あるいは私を抱いてもどちらでもいいですよ」
って言いながら、手にはナイフを隠し持ってるっていうね。
こいつヤバイ。
敵に回したらアカン奴や。
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
もうね、急にこの人どうしちゃったのかなって思ったよね。
で、その後私がどうしたかと言うと、2作目以降をしっかり読了しました(笑)
優佳の思考が理解できないんだけど、
あり得ないって思うんだけど、
優佳のサイコパスっぷりが気になって気になって、碓氷優佳シリーズを全作読んでしまったよ。
頭脳明晰xサイコパス
碓氷優佳というキャラクターが強烈で、強烈で。
決して犯罪は犯さないし人当たりもいいけど、自分の欲求を満たすためなら手段を選ばない女、それが碓氷優佳です。
気になる人はぜひ『扉は閉ざされたまま』を読んでみてください。