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日本のIT産業でなにが起きたのかがわかる本『日本はなぜ負けるのか』

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これまで日本のGDP減少の理由は、人口の減少が原因と言われてきました。

「そっか、働く人が減ってきてるから経済力も落ちてるのね」と、もっともらしい理由に私も共感してました。

しかし、本当に人口の減少が経済に影響を及ぼしているのでしょうか?

今回ご紹介する『日本はなぜ負けるのか』では、人口減少とは別の原因を示唆しています。

本書は私が数年前に読んだ本ですが、今読んでも説得力のある色褪せない内容となっています。

同時に、こんな指摘はもう古いと言えない現実に「あぁ、日本はまだまだなんだな」と思いました。




「失われた20年」日本経済が発展しない原因とは!

日本のGDPの減少は人口減少が原因ではない

本書では、1994年を起点に20年間の日本経済を題材にしており、この20年間を『失われた20年』と表現しています。

他国と比較して日本経済がひとり負けしているからです。

なぜ日本だけGDPが減少しているのでしょうか?

人口が減少しているのは日本だけではありません。他国でも同じように人口が減少しています。

もし人口の減少がGDP減少の理由だとしたら、他国でも同じように減少しているはずです。

しかし、日本を除く国々のGDPは、減少どころか2~3倍に跳ね上がっています。

このことから、GDP減少の理由が人口減少ではないと言えるでしょう。

変化に弱い日本の文化。インターネット革命で他国と差が開いてしまう

『失われた20年』の起点となる1994年にいったい何が起こったのでしょうか。

よく革命的な何かが始まる年を『○○元年』と呼んだりしますが、1994年は『インターネット元年』でした。

日本でインターネットの商用化が始まった年です。

ひとり1台のスマホを持っている今日ではネットに繋がることが普通であり、当たり前の事柄ですが、当時は革命的な出来事でした。

インターネットで買い物をするなんて考えられなかったし、限られた人しかインターネットを利用していなかった。

この画期的な技術で世界は大きく変化しました。

しかし、日本は新しいものを受け入れるのは慎重であり、一言で言えば変化に弱い国です。

インターネット革命が起きてからの日本の功績は、インフラ整備だけに留まります。

どこでも繋がるネット環境を整えることに関しては、他の先進国に引けを取りません。

しかし、そのインターネットを有効に活用し、ビジネスに繋げる点においては他国に大きく差をつけれらてしまったのです。

ハードは得意だけどソフトが苦手

せっかくインフラを整えたのに、事業やサービスに活用できず、インターネット以前のままの構造で過ごしてしまいました。

非常にわかりやすい日本の常識は、変わらないこと、実績のないものは採用しないこと、前例のないことはしないこと、だったわけですが、その考え方は、変化しない時代には、きわめて有効に機能すると思います。
しかしながら、変化の時代には、マイナスに作用するのではないでしょうか。

 

「日本における失われた20年」とは、「インターネットによる世界経済の構造変化が起こっていることを」気づかずに過ごした20年だったのです。

経済成長を担うイノベーションの鍵はインターネットであるにもかかわらず、インターネット以前のままのIT産業の構造

イノベーションとは、今までにない新しい方法や仕組みなどを導入することです。

わかりやすい事例だと、iPhoneはまさにイノベーションでした。

物理キーをなくし、端末を丸ごと画面にする、そして操作はすべて画面で行う。
初めて見た時はド肝を抜かされたものです。

ジョブズさんのプレゼンも秀逸でしたね。

「phone、camera、music・・・3device?No,1device!!」

そりゃスタンディングオベーションにもなります。大絶賛です!

こちらの図をご覧ください。

アメリカのトップ10企業と日本のトップ10企業です。

アメリカでは1994年のインターネット革命後に設立した企業がランクインしているのに対し、日本は1社も入っていません。

インターネットによる構造変化に対応しきれず、イノベーションを起こせずにいるのです。

「インターネット業界」と「情報サービス業界」は別物

どうも日本社会では、「インターネット業界」と「情報サービス業界」とを混同し、両者とも「IT業界」と捉えているフシがあります。
しかし、この2つの業界はまったく異なる業界で、「情報サービス業界」は「インターネット化」されていない重大な問題を含んでいます。

言われてみれば、そうかもしれません。
10年前に私が働いていた会社は情報サービス会社でしたが、オフラインで作業していました。
情報サービス会社ですので、システム開発部が主体となっているにもかかわらず、インターネットを活用するオンライン作業は少なかったように思います。

また、現在の職場でもskypeなどを使ったオンライン会議はここ数年で導入したくらいです。
よくて電話会議が精一杯でした。

イノベーションの鍵はインターネットなのに、情報サービス業界ですらインターネット化されていない懸念があるのです。

米国のインターネットの第一線で活躍するA・I時代の経営者と日本のB・I時代の経営者とでは、議論が噛み合わないだけでなく、そもそも日本は、インターネット登場後のIT産業の国際競争どころか、スタートラインに立っていない状態が続いています。

情報サービス産業の構造的問題

日本では、エンジニアの大半がIT業界に従事しています。
つまり、「IT業界」と「非IT業界」が分断された状態にあります。

IT業界のゼネコン構造が人材が育たない原因と指摘され始めていますが、2年前に発行された本書でも触れています。

①情報システムを発注側ユーザー企業とこれを受託側IT企業に分断されていること。
②日本のITエンジニアの年収が、米国の2.2分の1と低水準であること。
③情報サービス業界の多重下請構造が存在すること。

ユーザとエンジニアの距離が遠いと、経済的ロスが大きいだけでなく、要求仕様のミスマッチも生じやすくなります。

ユーザからすれば「お金をかけたほどのものが出来上がらない」となるだろうし、エンジニアとしても長時間労働に繋がり疲弊していきます。

「ゼネコン構造+年功序列、メンバーシップ型の構造」は、エンジニアのモチベーション、向上心、好奇心を低下させるだけで、経済の発展どころかイノベーションが起きなくて当然と言えるでしょう。

「なぜ日本は負けるのか」の感想

日本のひとり負けから始まる本書は、非常に衝撃的で且つ論理的な説明に納得せざるを得ませんでした。

ここまでご紹介させてもらった内容は第二章までです。

目次の紹介

第1章 過去の20年間に日本のGDPだけが4%減少!
第2章 世界経済の構造を変化させたインターネットの衝撃
第3章 失われた20年を打破する成長戦略の担い手とは?
第4章 失われた20年を打破する成長戦略を阻む厚い壁とは?
第5章 日本が負けないための処方箋

働けば(ものを作れば)利益が出る工業社会の時代は終わりました。

これからは、ものを提供するだけでなく、価値を提供しなければ利益を出すことはできません。

後半で「既得権益」「岩盤規制」の話にも触れていますが、一部の大企業だけが利益を生むのではなく、若い元気な企業がもっと活躍する仕組みにしていかなければ、今後も負け続けてしまうでしょう。

本書では「今後はIOT、AI、ビックデータの3分野が経済発展の鍵となり、その中のIOTにおいて、ものづくりを得意とする日本が優位な立場にある」と予想しています。

ネガティブなことばかり紹介してしまいましたが、日本の弱みと強みの両方を分析した本となっています。

経済に興味のある方はぜひ読んでみてください。